2005年(平成17年)11月17日に実施される予定であった新規指定後の個別指導に際し、原告は弁護士とともに同僚医師の同席を認めるよう事務指導官に求めた。
ところが、事務指導官は同席を拒否する理由も示すことなく、「ダメだ」の一点張りで個別指導を実施しないばかりか、原告に対し監査を示唆するなどの発言を行った。
原告は2006年(平成18年)2月9日、岡山社会保険事務局の不当行為について岡山地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提訴、9回にわたる弁論を経て2007年(平成19年)8月28日、同地裁は「としながらも、 によって、指導の内容に従うか否かは任意の協力である」「手続きは厚労大臣の裁量」とし、請求棄却を判決した。
2007年(平成19年)9月7日、原告は岡山地裁の判決を不服として広島高裁岡山支部に控訴。控訴審は4回の弁論を重ね、2008年(平成20年)6月26日「控訴棄却」の判決を下した。
2008年(平成20年)2月8日、岡山地裁判決に関する宇賀克也東京大学大学院教授の講演会が東京都内で開催された。
宇賀教授は「正当な理由に基づく調整依頼に行政側は応ずるべきで、当初の計画に固執した場合、それが第一次的には指導を行う者の裁量で決定できるとしても、裁量権の逸脱、濫用の問題が出てくる」と論じた。
広島高裁岡山支部の判決は、原告から証拠として提出された宇賀教授の見解には全く触れず、健保法73条は「立会人以外の立ち会いを予定していない」として控訴を棄却した。
原告は、原判決における健康保険法73条と行政手続法32条の関係に関する解釈誤り及び最高裁判例に違背するとして、最高裁への上告手続を行った。
地裁及び高裁判決のいずれも原告の「敗訴」となったが、判決文や被告準備書面では、
(1)指導に従うか否かは任意に決定することができる、
(2)指導に従わなかったことを理由に不利益な取扱をすることはない、
(3)被指導者が立会医師にメリットを感ずる第一のケースは、指導官の見解に異論がある場合であろうが、指導を受ける者は自ら医療の専門家として同意できない旨を述べ、指導に従わないこととすればよい、
(4)同僚医師の同席を許すか否かは厚生労働大臣の権限に属するというべきであり(ただし、依然として行政手続法32条2項の制約があることから、これに従わなかったことを理由として、不利益な取扱をしてはならない)など、
原告の主張の核心部分を大筋で認めるものとなった。
最近行われた個別指導では、被指導者の質問に医療管理官が、
(1)持参物は強制ではない、
(2)指導の内容に従うか否かは任意などと回答するなど、
訴訟の成果を生かした事例が生まれている。
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