© タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名:佐藤秀峰 サイト名:漫画 on web
指導監査改善への運動は、「溝部訴訟」以後、各地の先生方の現場での抵抗をはじめ、選定理由の不開示や不当な自主返還を巡る「成田訴訟」などの裁判闘争を軸に確実に進められています。
一方、これまでの「お願い活動、カルテ整備活動」に特化した指導監査対策は、既に過去のものとなっています。理由は明白です。「悪いことをしないで、きちんとカルテ記入をしていれば大丈夫!」などという構えでは、通用しないしくみが個別指導なのです。そうでなければ、個別指導による犠牲者はとうに無くなっていたはずです。
先日、支援ネットに加盟する先生方の長年にわたる苦闘の結果、日弁連の意見書が出されました。また、一年にわたる「暮石新規個別事件」での激烈な闘い、心ある医療団体の開示請求、「監査マニュアル開示訴訟」を通じ、厚生労働省指導監査室が表にだせなかった「やり口」が明らかになりつつあります。
人権侵害に象徴される指導監査の問題点、構造的な全貌がほぼ明らかになった今、個別指導対象者である全保険医を視野に入れ、だれでもできる指導対策を練り上げてきました。
この「保険医・保険医療機関への誰でもできる個別指導対策マニュアル」は、6つの論点を組み込んだものとなっています。そして6つの論点を前提に活用すれば、いつでもどこでも誰でも実践できるものとなっています。
個別指導というステージにあげられてしまうと「黙秘権」すら認められない圧倒的に不利な条件で臨まねばなりません。「ありのままに」出席して無事に済むことはありません。
しかし、6つの論点で理論武装すれば心理的な優位性は誰でも確保できます。不条理な仕組みには必ず「著しい違法の疑い」、「恫喝とも思える行為」がシステム化されています。
マニュアルですので、個別具体的な対応策を打ち出しています。現時点での有効な対応策でありますが、厚生局の方々も日々こまめに対応策を練り上げています。支援ネットに蓄積されているデータを活用しながら、今後、随時更新して公開していく予定です。
保険医や保険医療機関に対する行政指導は、❶集団指導、❷集団的個別指導、❸個別指導・新規個別指導に大別されます。
保険医や保険医療機関は、健康保険法73条により厚生労働大臣の指導を受ける義務が定められています。
❶集団指導は、①保険医療機関
❷集団的個別指導は、レセプト1枚あたりの平均点数が高い保険医療機関(都道府県平均の1.2倍以上で上位8%)(レセプト件数が月平均で概ね30件未満及び前年度、前々年度に集団的個別指導、個別指導を受けた保険医療機関を除く)を対象に、講習等による集団部分と面接懇談による個別部分により指導が行われます(集団部分のみ実施されている場合もあります)。
集団的個別指導の対象となる保険医療機関は、毎年3月に開催される選定委員会で選定され、指導日の1ヶ月前に実施通知が送付されます。
集団的個別指導は教育的指導を目的としていることから自主返還は求められませんが、集団的個別指導を正当な理由なく拒否した場合は、個別指導が行われます。
個別指導は、選定委員会で選定された保険医療機関に対し、30人分の(可能な限り指導月に近い時期の)連続した2ヶ月分のレセプトに基づき、2時間の面接懇談方式で行われます。
個別指導に選定される理由は①支払基金等や保険者、被保険者などからの情報提供(情報提供の場合は優先的に個別指導が行われます)、②前回個別指導が再指導、③前回個別指導が経過観察で改善が認められない場合、④集団的個別指導の翌年度も高点数医療機関の上位4%に位置する場合、⑤正当な理由のない集団的個別指導の拒否、⑥その他、特に個別指導が必要と認められる場合等です。
個別指導の主な流れ
①1ヶ月前 実施通知送付
②「保険医療機関の現況」等の提出
③1週間前 患者指定FAX①(20名分)
④前日の正午まで 患者指定FAX②(10名分)
--- 指導当日 ---
⑤出席者の確認
⑥持参資料の確認
⑦指導実施(診療所は2時間)
⑧取りまとめ(講評のための打ち合わせ)
⑨講評(口頭での指摘事項の説明)
--- 指導終了 ---
⑩指導結果通知(概ね妥当、経過観察、再指導)(原則1ヶ月以内
⑪改善報告書提出(求められた場合)
⑫自主点検〜自主返還(求められた場合)
新規個別指導は、新規指定保険医療機関を対象に、新規指定から概ね6ヶ月〜1年以内に実施されます。
個別指導との主な違いは下記のとおりです。
①新規個別指導は、新規開業した全ての保険医療機関を対象に実施されます。
②新規個別指導の対象レセプトは、診療所の場合10人分(個別指導の場合は30人分)です。指導日の1週間前にFAXで送付されます。
③新規個別指導の指導時間は、診療所の場合1時間(個別指導の場合は2時間)です。
④新規個別指導の結果、自主返還が求められる場合は、指導対象となった10人分のレセプトについてのみ(個別指導の場合は過去1年間の全診療分)自主点検が求められます。
⑤正当な理由なく新規個別指導を拒否した場合は、個別指導が実施されます(個別指導の場合は監査が実施されます)。
なお、新規個別指導の実施通知には「正当な理由なく個別指導を拒否した場合には、監査を実施する」旨の教示はありませんが、新規個別指導であっても、指導中断や指導中止の後、監査へと移行する場合があります。
保険医や保険医療機関には健康保険法の規定により厚生労働大臣の指導を受ける義務が定められていますが、指導はあくまで行政手続法に基づく行政指導です。
行政手続法32条は、行政指導の一般原則として、①行政機関の任務や所掌事務の範囲を逸脱してはならない、②指導の内容はあくまで保険医の任意の協力によってのみ実現されると規定しています。
指導への持参物はあくまでも行政からの「お願い」に過ぎず、法的根拠や強制力はありません。
しかし、厚生労働省 保険局 医療課 医療指導監査室作成の医療指導監査業務等実施要領・指導編
個別指導や新規個別指導の終了後には、次の4つの区分で措置がなされます
①概ね妥当…診療内容や診療報酬請求が概ね妥当適切の場合。
②経過観察…適正を欠く部分が認められるが程度が軽微で診療担当者の理解も十分得られており、改善が期待できる場合(改善報告書受理後、数ヶ月間、レセプト等により改善状況を確認し、改善が認められない場合は再指導)。
③再指導…適正を欠く部分が認められ、再指導を行わなければ改善状況が判断できない場合(次年度の個別指導の対象となる)。
不正・不当が疑われ、患者から受療状況等の聴取が必要な場合は、患者調査の後、再指導(患者調査で不正や著しい不当が明らかになった場合は、再指導ではなく監査が実施される)。
④要監査…監査要件(①診療内容や診療報酬請求に不正や著しい不当があったことを疑うに足りる理由がある、②度重なる個別指導によっても診療内容や診療報酬請求に改善が見られない、③正当な理由なく個別指導を拒否)に該当する場合。
指導中に診療内容・診療報酬請求に明らかな不正や著しい不当が疑われる場合は、指導を中止し、直ちに監査を行うこともできる。
個別指導はあくまで行政指導ですが、事実確認の調査や不正・不当の摘発が行われているのが実態です。
その背景には厚生労働省が①自ら保険診療のルールを決め(診療報酬改定)、②自らルール違反を摘発し(指導〜監査)、③自ら制裁を加える(取消処分)ことが可能という、他の行政機関等では例を見ない特異な健康保険法令の構造があります。
「行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない」とする法律(行政手続法32条2項)や、「個別指導も行政指導であるから、指導された内容に従うか否かは指導を受けた保険医の判断に委ねられている」との判例(広島高裁岡山支部 平成20年6月26日判決)もありますが、実態は再指導や、指導と連動した監査、取消処分等の権限を背景にした行政の広範な裁量権により、保険医の人権や患者の受療権を侵害する「指導」がなされてきました。
厚生労働省が保険診療のルールを決める以上、指導を受ける義務を定めた健康保険法に基づく指導は、事実確認の調査や不正・不当の摘発ではなく、保険診療のルールを周知徹底すべき厚生労働省の責務を定めたもの、と解釈するのが適切ではないでしょうか。
新規個別指導中に生じた疑義について、明確な回答がなかったとして指導中断。3ヶ月後に再開された指導で振替請求が明らかとなり指導中止。7回の監査の後、取消処分。
個別指導中の薬剤に関する指摘について、具体的な回答がないとして指導中断。4ヶ月後に再開された指導で振替請求が濃厚となったため指導中止。6回の監査で約13万円の不正・不当金額が明らかとなり、取消処分。
指導中止の後、18回、延べ30日以上の監査の中で不正・不当の事実を一貫して否認するも取消処分。
指導中断の半年後、指導を再開するとして呼び出し、指導再開直後に指導中止、そのまま監査へ切替え。14回の監査の後、取消処分。
日本弁護士連合会が発表した意見書「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」
「そもそも法律上も、また、指導大綱・監査要綱上も、指導・監査の対象となった保険医等が適正な手続的処遇を受ける権利の実現のために弁護士の立会いを求める権利を制限できる根拠はない。
弁護士の職務
したがって、指導・監査について手続の透明性を確保し、保険医等に防御の機会を与えることが必要であるという観点からは、保険医等が自ら選任した弁護士を立ち会わせることが、指導・監査の対象となる保険医等の権利として認められなければならない」
事務連絡「個別指導及び監査における弁護土の帯同がある場合の対応について」
弁護士帯同
日々の診療で生じた疑問は都度「青本」
保険診療は、様々な告示や通知等に基づき、複雑なルールで行われています。「不正をしていないから大丈夫」は危険です。単純なミスや勘違いでも、算定要件を満たしていなければ不当請求とされるおそれがあります。
各厚生(支)局では電話やFAXで日常的に診療報酬に関する質問を受け付けています(厚生局によってはホームページ上に質問票や疑義照会票を掲載しています)。
診療や保険請求に関する疑問はもちろん、施設基準や算定要件に関しても積極的に質問し確認しておきましょう。
特にカルテ記載については「適正な記載」が求められています。日々のカルテ記載にあたっての疑問点も厚生局へ質問するとともに、「カルテ記載のひな形や基準を示してほしい」とお願いしましょう。
質問の際には、厚生局から回答があるまでの間に、質問に関連する診療や保険請求をどのように行えばよいか、あらかじめ確認しておくことも大切です。
もし、厚生局から回答がなかった事項について個別指導で指摘がなされた場合には、事前質問を行っていた旨を主張しましょう。
以下のケースでは、集団的個別指導や個別指導の日程変更が認められる場合があります(理由書と証明書類の提出が求められます)。
◉正当な理由の主な例〔証明書類〕
①入院中など、心身の状況に鑑み出席できない場合〔診断書〕
②通知前に海外渡航しており、指導日までに帰国しない場合〔航空運賃の領収書及び旅行会社の日程表等〕
③冠婚葬祭
④天災等で出席できない場合〔新聞記事等〕
連絡もなく指導会場に出席せず、指導開始時刻が経過した場合は指導拒否とみなされるおそれがあります。
正当な理由なく個別指導を拒否した場合は監査に移行します(新規個別指導や集団的個別指導を拒否した場合は個別指導が行われます)。
指導実施通知は、診療所の場合、1ヶ月前に通知されます。都合が悪い場合は直ぐに厚生局へ連絡し、事前によく相談しましょう。
ただし、帯同する弁護士の都合について、行政は「日程変更を行う必要はない」とする立場です。(事務連絡|個別指導及び監査における弁護土の帯同がある場合の対応について)
指導の対象レセプトは、「できる限り診療等の傾向・特色が現れているものを抽出する」として、「可能な限り指導月に近い時期のもの」「健康保険分、国民健康保険分、後期高齢者医療分の割合は問わないが、各区分を網羅する」「入院:入院外の割合は、医科診療所の場合4:6」「院外処方の場合は、必要に応じて薬局のレセプトも抽出」などとしています。
厚生労働省 医療指導監査室長は、指導時間内に予定していた対象レセプトの全てを完了できないと判断した時は、指導を中断するとしています。
個別指導は、医院毎に指導担当者が作成する指導項目のチェックリスト(指導講評セット)に基づき行われます。
当会の開示請求により全面開示された指導項目のチェックリストの雛形(医科版
厚生局によっては、ホームページで「個別指導において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項」を公表していますので、参考にしましょう。
個別指導では、カルテの他、診療に関する諸記録の持参が求められますが、持参物はあくまで「保険医の任意の協力」によるもので、行政からの「お願い」に過ぎません。(参考|指導のQ&A「指導への持参物は強制?」)
歯科の個別指導においては「患者毎の一部負担金徴収に係る帳簿(現金出納簿)、患者毎の内訳の判る日計表、患者毎の予約状況が判る予約簿」など、保険医療機関に作成・保存の義務のないものは持参不要です。
作成・保存していない場合には新たに作成する必要はありません。作成・保存していない旨を厚生局へ説明すればよい取扱いとなっています。(事務連絡|都道府県歯科個別指導における持参物について 平成26年9月25日)
指導実施通知の当日準備して頂く書類等をよく確認し、作成・保存義務のない資料の持参が求められていた場合は、上記事務連絡に基づいた対応を求めましょう。
医科の個別指導についても、今後、作成・保存義務のない持参物の取扱いに係る事務連絡が発出される可能性があります。不明な点は厚生局の担当者へ問い合わせましょう。
❶録音は必ず行いましょう。指導内容の確認を目的とした録音は行政も認めています。 (医療指導監査業務等実施要領・指導編|65頁)
❷カルテは技官
個別指導において、行政は保険医の許可(任意の協力)なくカルテを閲覧できません。行政も指導は「患者のプライバシー保護に万全を期する必要がある」としています。(医療指導監査業務等実施要領・指導編|65頁)
❸「青本」
❹厚生局への事前質問で回答がないものがあれば、指導の場で再度質問しましょう。
❺「患者都合は聞いていない」などと言われるケースがありますが、療担規則違反です(療担規則20条及び21条「診察は、特に患者の職業上及び環境上の特性等を顧慮して行う」)。
❻行政担当者の心証を良くしようと努めても無意味です。こちらの正当性を主張する方が大切です。
個別指導に同僚医師・歯科医師の同席を求めた暮石訴訟の準備書面において、国は「…指導を受ける者が立会い医師にメリットを感ずる第一のケースは、指導官の見解に異論がある場合であろうが、指導を受ける者は医学の専門家として同意できない旨を述べ、指導に従わないこととすればよい…」と主張し、指導における異論・反論を認めています。
行政手続法32条も「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と規定しています。
溝部訴訟判決では、「不正・不当」の証明責任は国にある(例えば、検査について診療上の必要がないことを国側が医学的に証明しない限り「不当」検査とはいえない)としています
保険医
弁護士は医学的な見解の相違にはタッチできませんが、監査への移行をほのめかしたり、「お願い」を強要するなど、行政手続法に違反する事態には、即時に介入してもらいましょう。
個別指導では、行政から都道府県医師会・歯科医師会や支払基金等の審査委員に対して、立会いの依頼がなされます。
立会人は「行政側からの要請がない限り発言できない」「不適切な行動、発言で指導に支障をきたす場合、不適切な行為を続ける場合は退席を求められる」立場です。
立会人は、「中立的立場から指導の適正を監視する立場」や、「指導を受ける保険医に援助を与える立場」ではありません。
指導・監査において、保険医に「黙秘権」はありません。個別指導で診療内容等の質問に保険医が十分な説明や回答を行わなかった場合、行政は指導を中断するとしています。
監査においては「答弁拒否」も取消の理由(健康保険法80条4号・81条2号)とされます。
個別指導に同僚医師・歯科医師の同席が認められたケースもありますが、 個別指導に同僚医師・歯科医師の同席を求めた暮石訴訟判決では、別室で同僚医師・歯科医師が待機し、休憩中に相談を行う別室待機方式を従来認められてきた方式として認めています。(広島高裁岡山支部 平成20年6月26日判決)
指導時間中でも申し出れば、随時休憩することができます。別室待機方式であれば、指導時間中でも同僚医師・歯科医師からの助言を受けることが可能です。
持参物の任意性(控室にて)
行政担当官/持参物の確認のため、今日お持ち頂いた持参物を指導会場にお持ち頂きたいのですが…。
保険医/持参物は全て持ってきています。カルテ等は主治医である私の同席のもとで確認して頂きたいのですが、持参物を持ってくるのは義務ですか?任意ですか?任意であるならば、指導が始まってから私と一緒に確認を頂きたいのですが…。
録音(指導の開始直後)
行政担当官/指導に先立ち、本日の指導手順等の説明をさせて頂きます。本日の指導につきましては健康保険法第73条、船員保険法…
保険医/(レコーダーを出して)指導内容の確認のため、録音させて頂きたいのですが。
行政担当官/ではこちらも録音させて頂きます。
行政指導であることの確認(事務的な事項の確認後)
行政担当官/本日お持ち頂いた対象患者さんのカルテのご用意を…
保険医/カルテをお見せる前に、健康保険法73条に基づく検査証を確認したいのですが…
行政担当官/本日は指導ですから、検査証はありません。
保険医/では、今日の指導は行政手続法に基づく行政指導ということでよろしいですね?
カルテの技官のみ・指導対象月のみ限定開示
保険医/指導はあくまで私の任意の協力によるものですよね。患者さんのプライバシー保護に万全を期すため、カルテ閲覧は医師(歯科医師)資格を持つ技官限定で、指導対象月のみでお願いします。
行政担当事務官/受診日を確認したいのですが…
保険医/◯月分と言って頂ければ、こちらでカルテを確認して受診日をお答えします。でも、指導は調査や検査ではありませんよね?
納得出来ない指摘がなされた場合
保険医/それは「青本」
講評|指摘事項の確認と改善報告書について
行政担当官/只今申し上げた内容は後日文書に取りまとめて◯◯厚生(支)局長から通知致します。
保険医/指摘事項は今おっしゃられた◯点で間違いないですね?
行政担当官/そうですね。改善事項及び診療報酬の自主返還が必要な事項につきましては、別途お渡しする所定の様式で報告書を提出して頂くことになりますのでよろしくお願いします。
保険医/改善報告書は義務ですか?任意ですか?
行政担当官/「お願い」になります。
1日で終わると思っていた指導が中断となった場合、あなたの保険医資格は既に危機的状況かもしれません。
その後、患者調査、複数回の指導中断→指導中止を経て、監査→聴聞→地方医療協議会への諮問・答申→保険医登録
取消処分となれば「◯◯万円の不正請求」とマスコミ報道され、一律5年間、保険診療が出来ません。医療現場への復帰が困難となる事実上の「死刑判決」と言えます。
取消処分の際に詐欺罪での告発に言及されることもあります。
指導〜監査〜取消処分のフローチャート
取消処分に至るまでには様々な段階があります。不当な処分から保険医資格を守るためには、自分が今、どの段階なのかを把握した上で、各段階での行政のやり方に則した対応が求められます。
適時調査~個別指導~監査~取消処分の流れ図や、ページ最下部に掲載の「医療指導監査業務等実施要領」を参考にして下さい。
「支援ネット」の取り組みをご覧下さい
「支援ネット」ホームページでは、指導や監査、処分取消訴訟に関する様々な情報を掲載しています。
不当な指導や監査、処分が行われた場合には、すぐに相談フォームからご連絡下さい。
支援ネット世話人(全国各地の医師・歯科医師で構成)が相談に応じます。
まず、指導内容や指摘事項に異論がない場合は、早急に改善を図りましょう。
改善報告書の提出も「保険医の任意の協力」です
しかし、行政は「改善報告書が提出されない場合は督促を行う等、適切に指導を行う」「改善報告の内容が、指摘に対する改善の効果が期待できない等、不十分な場合は返戻し、再提出を求める」としています。
行政が改善報告書の提出を強制することは、行政手続法32条違反となります。裁判所も、「保険医は健康保険法73条に基づき個別指導を受ける義務があるものの、個別指導も行政指導であるから指摘された内容に従うか否かは指導を受けた保険医自身の判断に委ねられる」と判示しています(広島高等裁判所岡山支部判決 平成20年6月26日 平成19年(ネ)第204号)。
万一、取消処分を巡る訴訟となった場合、改善報告書は行政側から証拠として提出されるおそれがあります。
「青本」
自主返還もあくまで「保険医の任意の協力」による行政側の「お願い」にすぎません。(仙台高裁秋田支部判決 平成23年11月9日)
行政は、「不正・不当請求により支払われた診療報酬を返還しない保険医療機関は療担規則2条の4(保険医療機関はその担当する療養の給付に関し、健康保険事業の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない)に違反するため
「指導の場で確認できなかった」として返還が求められる場合がありますが、「不当な事項を確認した時は、事実の確認を行った上で自主返還を求める」とする通知に反する取扱いです。(指導大綱における保険医療機関に対する指導の取り扱いについて 平成7年12月22日)
指導で確認できなかった場合でも、後日、保険医が自ら確認した場合は、その旨を改善報告書に記載し、提出して下さい。
自主返還に同意する場合、返還方法には下記の3通りの方法がありますが、❸の方法は保険医に一切周知されていません。
返還同意書を提出せず、❸の方法での返還を行うこともできます。
自主返還の方法
❶今後支払われる診療報酬から控除(相殺)
❷保険者へ直接返還
❸誤りのあった診療報酬請求を撤回し、改めて正しい請求を審査支払機関に対して行う
(参考|成田訴訟報告・保険医への行政指導を正す会)、平成25年12月10日 長妻昭衆議院議員の質問主意書への政府答弁書より)
指導後の措置
なぜ自分が個別指導に選ばれたのか、指導への選定理由についても、日弁連の意見書は、「選定の根拠となった情報は、個人情報保護法制上、情報主体たる保険医に開示されるべきもの」
「保護法」は、行政機関が保有する個人情報について、本人からの開示請求を認めるものです。(「保護法」における開示請求の対象は、行政文書に記録された保有個人情報です)
「情報公開法」に基づく開示請求では個人情報は開示されませんが、「保護法」では開示を求めることができます。
開示請求の方法
「保護法」に基づく開示請求書を、開示を求める本人が管轄の厚生局長宛に提出します。開示手数料は1件300円。本人確認書類も必要です。ネット上
制度の概要については、制度を所管する総務省が作成したパンフレットをご覧下さい。
開示請求書の様式や記載例はこちら
総務省の行政評価事務所やインターネットによる行政相談受付
「厚生局の説明や対応に納得がいかない」「厚生局に直接苦情を言いにくい」など、個別指導に関する困り事もお気軽にご相談されることをお勧めします。(相談窓口のご案内はこちら)
指導後の措置が「経過観察」となった場合
「経過観察」は改善報告書の受理後、数ヶ月間、レセプトまたはその他必要に応じ保険医療機関から提出を求める書類により改善状況を確認し、改善が認められない場合には、次年度の個別指導の対象とすることとされています。
指摘された事項に関連する診療報酬請求にあたっては十分留意しましょう。
指導後の措置が「再指導」となった場合
「再度指導を行わなければ改善状況が判断できない」とされた場合は、「再指導」(次年度の個別指導の対象)となります。
したがって、「再指導」では、前回指導時の指摘事項に対する改善状況の確認が主題とされるべきです。
「度重なる個別指導によっても改善が見られない時」は監査要件の一つとされています。
「再指導」が繰り返される場合には、至急、弁護士と相談されることをお勧めします。
医療指導監査業務等実施要領(指導編)
平成30年9月版(pdf)
厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が各地方厚生局に対し、保険医療機関・保険医の指導に係る業務について、処理手順や手法を定めたもの
医療指導監査業務等実施要領(監査編)
平成30年9月版(pdf)
厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が各地方厚生局に対し、保険医療機関・保険医の監査に係る業務について、処理手順や手法を定めたもの
医療指導監査業務等実施要領(法令編)
平成30年3月版(pdf)
厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が、指導や監査に係る法律、政令、省令、告示、通知等をまとめたもの
事務連絡|個別指導後の措置の判定に関する留意事項について
平成30年3月22日(pdf)
個別指導後の措置判定に係る基本的な考え方と4つの観点を示したもの
通知|保険医療機関等の不正請求等に係る返還金の回収状況の把握について
平成30年4月27日(pdf)
不正・不当請求に係る返還金の時効、把握・回収状況、回収実績の報告の取扱いを示したもの
事務連絡|新規指定時集団指導及び新規個別指導の対象について
平成30年3月2日(pdf)
新規指導の対象となる保険医療機関について示したもの
事務連絡|歯科個別指導における持参物について
平成26年9月25日(pdf)
歯科の個別指導において、日計表、現金出納簿、予約簿等の取扱いを示したもの
指導実施通知|歯科個別指導における持参物について(関東信越厚生局)
平成27年4月2日(pdf)
個別指導(歯科)において「作成・保存していない場合は持参する必要がない」旨が記載された実施通知
事務連絡|個別指導における診療録等の閲覧の拒否に係る対応について
平成25年10月22日(pdf)
個別指導において、カルテの閲覧拒否があった場合の対応を示したもの
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