「指導監査国家賠償請求訴訟」(国賠訴訟)Q&A


原告が勝つことの少ない国を相手の訴訟(国家賠償請求訴訟)をなぜ支援するのかという素朴な疑問が寄せられることがあります。訴訟支援のほぼ常識に属することですが、Q&Aにして整理してみました。

原告の先生方に思いをはせる方は是非お読みください。

Q1 国を相手の訴訟は、原告(保険医)の勝率が少ないとはほんとうですか?

ほんとうです。原告が勝訴する確率は1割にも満たないでしょう。

 

Q2 裁判官も国の機関に属する役人=司法官僚だから国に有利な判決を書くのでしょうか。

個々の裁判官の深層心理まではわかりませんが、「司法官僚」というひとくくりで考えれば一般論としてはそのような傾向にあるでしょう。
逆に考えれば、まれに画期的な判決を書く裁判官もいるということです。

 

Q3 ほとんど負ける訴訟なのにどうして原告は、訴訟を起こしたのでしょうか?

勝率をあてに提訴した原告はいないでしょう。
訴訟という手段以外に選択肢がなかったときに、人間の尊厳をかけて訴訟に至ったという心情は、原告共通のものだと思います。

 

Q4 訴訟以外に解決の道はなかったのでしょうか。

あればすでに解決しています。

 

Q5 指導、監査改善の運動は訴訟以外にないのでしょうか。

いろいろあるでしょう。
これまでは「行政にお願いする活動」以外に指導、監査の分野では運動らしきものはほとんどありませんでした。

 

Q6 なぜそう言い切れるのですか?

指導監査が原因と思われる自殺者が後を絶たないという歴史が証明しています。

 

Q7 行政にお願いしてもなぜ効果がなかったのですか?

指導監査の現場で起こる人権侵害は、技官の資質によるものではなく仕組みから由来するものです。
仕組みにのって実施してきた行政にお願い事をしても、通じないのは当然といえば当然のことでした。

 

Q8 裁判ではなく、もっとうまいやり方はないのですか?

訴訟を提起するというのは、一つの手段の選択です。指導監査に関わることは、多種多様な問題があります。原理的には多種多様な手段があるでしょう。
政権交代以前から国会で委員会質問という形で指導の問題が扱われたことはありましたが、指導監査の仕組みが改善されることはありませんでした。

 

Q9 個別指導へ同僚医師歯科医師の同席が認められた事例はないのですか?

「同僚医師歯科医師」の個別指導への同席を厚労省は、一切認めていません。
暮石訴訟(同僚歯科医師を求めた訴訟)で国側が提出した書面でも明示しています。

 

Q10 無条件ではないにしても、医師、歯科医師が指導に同席した事例は本当にないのですか?

いくつかの条件付きで認められた事例はあります。

 

Q11 それはどんな条件下で行われたのですか?

指導を受ける医療機関と顧問契約を結んでいる医師、歯科医師が同席するということは、地域限定的ではありますが以前から行われており、今でも行われています。

 

Q12 正面からではなく実質的に医師、歯科医師同席に近い形をとれないでしょうか?

とれます。顧問契約、保険医登録した勤務医を顧問契約する以外には、別室待機方式というものがあります。

 

Q13 別室待機方式とはどのようなものですか?

指導会場ではなく別室に「同僚医師歯科医師」が待機して個別指導時間内に随時相談を受けてアドバイスする方法です。

 

Q14 どこでも認められているのですか?

地域限定ですが、裁判所も認めている方式です。
指導を受ける先生の安心感はありますがリアルタイムではありません。
タイムラグ方式ですので限界があります。

 

Q15 地域限定で認めていることが裁判の判例を根拠に認めないということがあるのですか?

あります。

 

Q16 具体的にはどのようなことですか?

詳細まで把握していませんが、顧問契約を結んだ医師、歯科医師の帯同が拒否されたということのようです。

 

Q17 顧問契約を結んでも拒否するのですか?

必ずしもそうではありません。
最近の事例では、歯科医師の帯同を拒否された暮石訴訟原告、暮石歯科医師の同席が実現しました。
また、請求事務担当の歯科医師の同席も実現しました。
「判例ですべてが覆る!」とはいえないことも実証されています。

 

Q18 どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?

司法の判断(判例)は、その事案に関するものでパーフェクトに全国に波及するということではありません。
「無条件には同僚医師の帯同を認めない。」ことは、暮石訴訟以前も以後も変わりはありません。

 

Q19 重ねてたずねますが同僚医師の帯同を厚労省が認めたことはないのですか?

ありません。あったら暮石訴訟を提起することはなかったでしょう。

 

Q20 判例により今まで認められたことが覆るというリスクをどう考えたらよいのでしょうか。

裁判所は、正義を実現するところではありません。判例は、積み重ねで人権侵害をはねのける手段になります。
不利と思える判決が出たらもうおしまいだと考えるのは、「負けるけんかはしない!」という勇ましい誤解の裏返しです。

 

指導 監査をめぐる動き



New! 後を絶たない指導医療官の不祥事 健保法令の構造的問題が背景に〜“個人のモラル”への矮小化は不祥事の連鎖を防げない岡山保険医新聞 2016年12月10日号より


都道府県歯科個別指導における持参物について事務連絡 2014年9月25日 厚労省医療指導監査室長補佐


個別指導における「カルテ閲覧」の法的根拠を示せない厚生局〜患者が拒否してもカルテを閲覧できると強弁岡山保険医新聞2014年10月25日号より


【中国四国厚生局岡山事務所による新見解】個別指導でのカルテの限定開示、持参物を忘れた場合の対応、一部負担金を支払うことが出来ない患者への診療について岡山県保険医協会FAXニュース2014年10月1日号より


【談話】個別指導と守秘義務に関する日歯・大久保会長の見解について〜岡山県保険医協会 指導・監査対策室 室長 暮石智英岡山保険医新聞 2013年11月25日号より


【談話】指導における違法性 さらに浮き彫りに 2013年10月22日付 厚労省医療指導監査室長「事務連絡」について〜岡山県保険医協会 指導・監査対策室 室長 暮石智英岡山保険医新聞 2013年11月10日号より


【談話】法を無視した指導監査室の戯れ言と俗論を斬る!〜岡山県保険医協会 指導・監査対策室 室長 暮石智英2013年10月1日


【9月11日個別指導ダイジェスト】厚生局は保険医の了解を得なければカルテを閲覧できない。閲覧に協力した保険医側に個人情報・守秘義務違反の恐れあり2013年9月25日


個別指導時に「カルテ閲覧」の権限はなく守秘義務・個人情報保護法に抵触のおそれ…中国四国厚生局長が認め本来の行政指導を実施2013年9月11日


支援ネット 指導大綱・監査要綱 改定案2011年6月15日


寄稿/厚生局日野技官よ!知らなかったではすまないぞ〜新規指定集団指導で目撃した狡猾で悪辣な手法の数々 2011年12月15日


指導・監査国家賠償請求訴訟(国賠訴訟)Q&A 2010年11月28日


実録!録音妨害 2010年10月12日


個別指導に関する質問で不服審査請求 2009年4月1日


某病院に対する個別指導の指摘事項 2009年1月24日


質問に答えられなくても自分たちは問題なし、医療機関が知らなければ重大な過失 2008年11月5日


「不正請求」の解釈を拡大 2008年9月29日


個別指導への持参物は任意の協力。指導結果に従うか否かも「任意」 2008年8月10日

(C) 2008- 指導・監査・処分取消訴訟支援ネット