先日、個別指導で、厚生局が録音妨害をしたことが明らかとなった。
厚生局に移管後から、今までにない理由を持ち出して録音をさせない事態となっていたことは把握していた。しかし、当事者の先生が声を上げない限り具体的な追求をすることができなかった。厚労省は、録音と、弁護士同席について表向きは「やむなし」ということであるが、実際には録音を現場では認めようとしていない。二枚舌である。
どのように録音を妨害しているのか。ここに録音にもとづいて明らかにしておく。
指導を受ける開設者、非常勤歯科医師、請求事務担当の3人に技官と事務官(課長)と事務官そして厚生局付きの技官、人的には3対4という力関係で指導が行われた。
個別指導とはいえ、取り調べである。当然録音の準備を出席者全員がしている。開始直後に「録音をご遠慮願いたい」旨の発言があったが、あくまでもこれは行政用語でお願いに過ぎない。世の中には遠慮しない人間もいる。そして指導が粛々と続いた。そして録音も粛々と続いていった。そしてそれに気がついた。隠していたわけではなく机の上に置いて録音していたことを気づいていなかったようだ。
突如、録音に気がついたようで、指導中にかかわらずこれでは指導ができないと恫喝的な言動を始める。指導の中で次のようなやりとりが行われた。◆赤字部分が厚生局、●青字部分が指導を受ける保険医側である。
◆あのですね、我々が今日のこの指導では録音は止めて下さいと言っているんです。
ですから、止めて下さい。
平たくいうと、根拠も示せずに「駄目なものは駄目!」、僕たちのいうことを聞きなさい!と脅し文句である。何の理由もいわずに無理が通るばかりと思ったら大間違いだ。反論が始まる。
●録音は先ほどご遠慮下さいと言ったでしょ。請求事務担当者も遠慮しませんと言ったじゃないですか。
●ここ、停止ボタンなんです。もし止めさせる権利があるというんだったら、停止ボタンを押して下さいよ。どうぞ。
●法的根拠があれば、止めます。法的根拠がないんだったら、続けます。
ご遠慮願いたいという厚生局側の「お願い」に対してどうするかは任意の協力である。お願いでなければ何らかの法的な根拠が必要である。法律に基づいてしか公務員がやれることは一切ない。
◆法的根拠は、基本的に、他の医療機関の、個人情報が入ってきますので、ですから、止めて下さいとお願いしております。
一部屋に5件ほどの医療機関を呼んで個別指導を設定しておきながら個人情報を持ち出してきた。
といっても、患者名を大声で叫ばない限り個人識別はできない。特定個人を識別できないものを個人情報とはいわない。法的根拠といいながら法律は知らない。しかし、やっとお願いということを認めた。厚労省のお役人は、ずいぶんと激怒しながらお願いをするものである。
お願いなんだなということを確認する意味で念押しをする必要がある。任意の協力による指導という枠組みを思い知らせておかなければならない。
指導現場での反論により録音は粛々と行われ妨害をはねのけることができたことは大きな成果である。
●お願いだね。
◆命令ではないです。
以上のように、厚生局は個別指導での録音を執拗に妨害し、やめさせようとする。
最初は威圧しながら「駄目なものは駄目!」ということで押し切ろうとする。法的根拠を追求されると無理解な個人情報を根拠に「他の医療機関の指導も含めてこのままでは続けられない。」と反論するというのがどうやらマニュアル化されているようだ。
厚労省の幹部が過日述べたように、研修はしっかりとやっている跡がうかがえる。(法的な理解はまだまだであるが)個別指導8,000件目標のために一堂に集めて大部屋で仕切りなしに個別指導を行っている。これはこれで厚生局の手抜きであるが、実際に体験してみると、他の先生への指導内容など聞こえることはなかった。たとえ聞こえたとしても患者名を叫ばなければ個人情報とはいえない。聞こえてもいいが録音は駄目という支離滅裂な言動に対しては全くの無頓着である。
個人情報を持ち出して他の医療機関の個別指導を人質に、録音をさせないというきわめて卑劣な手段で妨害をするということが厚生局の指導の実態である。
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