溝部達子原告は2008年(平成20年)11月9日、全国保険医団体連合会(住江憲勇会長)の理事会で、個別指導から監査・取消処分に至る経緯と訴訟を提起した思いなどについて報告しました。
溝部原告は、個別指導が始まった2004年以降の4年間が人生で最も長く感じる期間であり、自らの人生を変える大きな転機になったと述べるとともに、訴訟を起こした動機が「患者のため、また監査・取消処分の実態を広く知らせるため」にあることを説明しました。そして自らの体験を通じて、(1)行政は正しい指導を行うなど本来の仕事をすること、(2)「不正」が担当者の恣意的判断で決まる「監査要綱」を改正すること、(3)「取消処分ありき」を許さないために、行政に対する抑制機能の必要性などを訴えました。
さらに全国保険医団体連合会に対し、「患者だけでなく国も診る『大医』として、医療崩壊をくい止めるために奮闘をお願いしたい」と期待を述べました。
120人余りの出席者からは、「保団連・協会の役割は極めて重要、物心両面で支援していきたい」「同じ小児科医として理解できる。支えることは当然」「先月の塩田原告の訴えと今回の話で疑問が解消し確信になった。断固として闘わなければならない」「塩田・溝部両原告の報告で訴訟の内容が分かってきた。保団連として支援するとの結論を出すべき」など、理解と共感が広がりました。
一方、「『患者のため』は分かるが、(対面のない診療は)認められない」「一部に脱法的なところもあるのではないか」という極論も出されました。
それぞれの原告は、精神的にも物理的にも大きな負担を背負って指導・監査の改善、不当な「不正請求」の判断に基づく一律5年間の取消処分のあり方を問う困難な裁判を闘っています。全国保険医団体連合会が発行する「月刊保団連」2008年(平成20年)11月号には、細見訴訟で画期的な判決を勝ち取った小牧英夫弁護士の「細見裁判の意義〜判決をどう生かしていくか」という論文が掲載されています。一部の極論は神戸地裁判決に冷水を浴びせるとともに、「保険診療では『知らなかった』とか『認識不足』など、認識していたか否かは関係なく不正として扱う」という、「不正」についての行政側の解釈と同一のものです。
不思議な展開でした。一部とはいえ保団連理事会に行政側と同じ趣旨の「公法上の契約論」が登場した意味は大きいものがあります。
溝部訴訟(山梨県)
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