2008年(平成20年)10月14日午後1時半から、甲府地方裁判所で溝部訴訟の弁論が開かれ本人尋問が行われた。尋問は、当初主尋問及び反対尋問それぞれ80分の予定で始まったが、午後5時になっても終了せず、11月20日に引き続いて行われることとなった。被告側代理人は「我々の質問に答えていただければすぐに終わるが、答えていただけない」と、自分たちの筋書き通りに尋問が進まないことに苛立ちを露わにする場面もあった。
この日は、溝部医師を支援する人たちやマスコミ関係者などで傍聴席は満席となった。
主尋問で原告代理人の石川善一弁護士は、溝部医師が個別指導の対象となった経緯をはじめ監査や聴聞の実態などについて質問を行った。
その結果、
(1)地方医療協議会の議事録に記載されている個別指導選定理由の多くが事実無根であること、
(2)監査では個別指導で問題にされた内容が変わるとともに、本人の弁明を聞こうとせず執拗な追及が行われたこと、
(3)聴聞においても、患者調書をはじめ関係資料の多くの部分が黒塗りされてどの患者の事例か分からない など、
防衛権の行使を妨げるものであったことなど、一連の手続や内容の不当性が明らかになった。
主尋問の最後に石川弁護士から「取消処分を受けて訴えたいことは」という問いかけに溝部医師は、取消処分の執行停止の決定を下した裁判官に感謝するとともに、
(1)無診投薬が不正請求とされているが、患者の利益・利便性を考えたことであり、実態のない架空請求と同一の処分は納得できない、
(2)指導段階で「取消処分が決まっている」といわれ、反論はあったが認めてしまった。恣意的な指導や監査を見直していただきたいと述べ、
「同じ思いをしている医師の代弁者として、一石を投じる覚悟で訴えを起こした」と心境を語った。
反対尋問は2人の指定代理人によって行われた。その内容は、
(1)患者家族の病名確定について、
(2)「ウソの記載ではないのか」などカルテ記載内容の追及、
(3)タミフルの投与時期についての医学的根拠など、
1時間30分にわたって同内容の追及がくり返し行われた。
これに対し溝部医師は、それぞれの患者や家族の状況、医学的所見や検査結果などから、家族全員が倒れるのを防ぐため緊急避難的に認められるべきではないか、と反論を行った。
溝部訴訟(山梨県)
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